今年も本校から17名の児童と生徒がこの学び舎を巣立った。数年前、まだ保護者に抱かれて入会した顔、ついこの間まで「はさみがうまく使えない!」と泣いてママに訴えていたあの顔…「えっ?もう幼稚部を卒業するの?!」と、時の過ぎ行く速さを痛感する。
この間、漢字の読み仮名をふっていないから教科書がすらすら読めないと落胆していたあの子も、今日は目に眩しいほどの白いカッターシャツを着て卒業生の席に着席し、自分の名前を呼ばれるのを待っている。横に並ぶと、いつの間にかとっくに身長を追い抜かされているあの子も座っている。どの顔も今日の晴天の空のように輝いている。
いよいよ自分の名前を呼ばれる時が来る。子どもたちの澄み切った声がコメニウス学校の講堂に響き渡る。壇上で卒業証書を校長から受け取り、降りて行く時の子どもたちの晴れがましい顔。ひと回りもふた周りも成長した姿に、列席した保護者の方々同様、彼らと過ごした思い出が懐かしく頭の中を駆け巡った。
「仰げば尊し」の前奏が流れると、急に涙腺が緩む。この子たちと一緒に過ごしたそれぞれの年を懐かしく、そして愛おしく思い出しながら、一年に一度歌うこの歌の歌詞を噛みしめた。
続いて入学式が挙行されたのだが、近年幼稚部の入学者が増えるにつれ、子どもたちの顔と名前が符合しないという嬉しい悩みがある。しかしどの顔も目がきらきらと輝き、これから始まる素敵な日々が待ち切れないといった顔ばかりであった。
初めて理事長から教科書を受け取った新一年生たち。どの顔も満面の笑顔である。小学校の教科書の何倍もある分厚い教科書の山を手渡された途端、その重さに唖然としている新中学一年生。そして、教科書が入学式までに到着しなかった為、教科書の目録を受け取り、さっきの中学一年生の教科書の量と比べ拍子抜けして苦笑する新高等部の男子生徒たち…。
こうして、子どもたちはこの日これから始まる短くも長い日本語行き列車の切符を貰った。これからは、自分の目的地に無事到着するまでひたすら走り続ける。その走行の安全を陰ながら支え導いてやれる喜びとその大任を、毎年この日に実感するのである。
「みんな、ご卒業おめでとう。そしてご入学おめでとう!」